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> これから始まる…
駅のホーム……
階段からかけ上がってきた私は、新幹線の座席に座ろうとしているあなたを見つけて、窓越しに叫んだ。


『……き、……私も…………私も好きっ!!』







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




高校3年の夏休みは、勉強と友達と過ごす時間で終わっていくものだと思っていた。


一学期の終業式が終わって、小学校からの腐れ縁とも言えるユチョンに呼び出された。


『何?話って…??
あっ……夏休みの終わりに皆で花火することでしょ?
ユチョナの家厳しいもんねぇ……やっぱりダメだった??』

『………あのさ、俺……』

『ん??』

『俺……葵のこと、好きなんだ。
だから、俺と……その…………付き合ってほしい…』

『ちょっ!!何よ……突然///
そういう話なら私………行くね……』







知らなかった………
だからあの時、私はどうしていいか分からなくて、走ってその場を後にした。



返事をしないまま、夏休みも残り1週間になろうかという頃、図書館で親友と勉強をしていた私は、思わずため息をついてしまった。

心配そうに見ている親友に、ユチョンのことを話した後のことだった。

『花火の時に顔合わせるの………やだなぁ………』

『!?…………葵、知らないの?
ユチョンくん、引っ越すから来ないよ』

『え?えっ?!』


訳が分からなくなってキョドる私を見ながら、親友は彼氏のジュンスにLINEをしだした。

ブツブツと独り言を言いながらやり取りをする親友……。


『………うそ……!?』

そう声をあげた親友を私は見つめる。


顔をひきつらせ、ゆっくりとこちらを向く親友の口から出た言葉………


『ユチョンくん…………今日行くんだって。
今、ジュンちゃんが一緒に……………ちょっ、マ葵っ?!』





気が付くと私は外に飛び出し、走っていた。
最寄りのバス停に着いたが、バスは出たばかりで来る気配がない。

時刻表と車の流れを交互に見ていると、一台のタクシーが通りかかり、すがる思いで止めた。



乗り込んだ私が告げた行き先は、
「〇〇駅」。


ふと我に返ると、本当にそこかどうかも分からない……。
おもむろに携帯を出すと、ジュンスに電話していた。

『ジュンちゃん?今、……今どこ?!
……………うん、うん。〇〇駅だね、分かった!!
時間は?出発は何時??』

慌てふためく私の会話を聞いて、運転手さんが電話を切った私に声をかけてきた。



『お嬢ちゃん、ただ事じゃなさそうだね?
………抜け道ブッ飛ばすから、しっかり掴まってなよ!!』

携帯を握りしめる私は、ただコクンと頷くことしかできない。
ドアの取っ手にしがみついていると、いつもの半分の時間で駅へと着いた。

タクシーのドアが開いて出ようとすると、お金を持っていないことに気付く。

『はっ…!!』

運転手のおじさんの方を見ると、

『急いで行きな。
頑張んなよぉ、お嬢ちゃん♪』

と、笑顔で送り出してくれた。

『あぁーお嬢ちゃん、これがないと中に入れないよ』

おじさんはそう言うと、ポケットからクシャクシャになった千円札を出して私に渡した。


ドアが閉まると私は一礼し、新幹線のホームへと駆け出した。
いつもより長く感じる登りの階段を一段飛ばしでかけ上がり、最後には息を切らしながら一段ずつ登り終えると駅のホームに着いた。


『どこ………どこっ?!』

キョロキョロと、首を振る私の目に飛び込んできたのは、新幹線の前でジュンスと話すユチョン。


『はっ!……待って…………ねぇ、待ってっ!!』

別れを惜しむ二人を見ながら人をかき分けて走る。


ドンッ!!


女性にぶつかると、バッグが落ちて中身が散らばる。
目は二人の方へ向けたまま、急いでばらまいた物をかき集めていると、ユチョンがジュンスに手を振り新幹線の中へと入っていった。

『あっ…!待ってっ!!』


女性に集めた物を渡すと、ジュンスが見つめる方へと再び駆け出す。

新幹線とジュンスの間まできた私が、肩で息をしながら中を見ると荷物を棚に直し終わったユチョンと目が合った。

驚いているユチョンを見て、笑っているつもりだった私。
けど、知らない間に涙が頬を伝っていた……


窓越しにユチョンが私の名前を呟く。
それに答えるように、私は叫んだ。


『……き、好き………っ!
私も、…………私も好きっ!!』


プルルルルルーーーッ




出発を告げるベルの音。
思わず私が響き渡るベルの音の方へと目を向けると、


ピーーーーーーッ!!

扉が閉まる合図の笛がなった。
我に返り再び彼のいる窓を見ると、彼の姿がない。

『えっ??………ユチョ………ユチョナ………?!』


『………葵っ!』



「彼の声が聞こえる…」

あり得ない状況に、固まっていた私が声のした方へと振り向くと、ゆっくりと進んでいく新幹線の横でホームに立つ彼の姿を見つけた。


『えっ………どう、どうし………て…??』


言葉に詰まった葵に駆け寄り、抱きしめるユチョン。

『俺は、その100倍好きだ。
俺の好きに…かなうわけないだろ………』

そう言い終わると、より強く私を抱きしめた。





これから始まる。
二人の新しい関係が………。







by k-tmyf | 2014-09-17 01:07 | 短編

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